アートは作品と鑑賞者の間に立ち上がる、
コミュニケーション。
—ACOPは「アート・コミュニケーション・プロジェクト」の略ですが、そもそも福先生にとって、アートとはどんな存在ですか?
まず“アート”と“アート作品”は違います。このふたつは混同されることが多いのですが、私は両者をはっきりと分けて考えたいんです。アート作品はモノ。しかも、基本的に作家が意図して作ったモノです。しかしアートは、モノではありません。アート作品を始め、何かをみることで初めて立ち上がる感情や考え……その現象そのものを私はアートだと思っています。
—ではその“アート”を通じて、ACOPではどんなコミュニケーションを?
「みる、考える、話す、聞く」という、私たちにすでに備わっている能力を、もう少しだけ高めながら、グループでのコミュニケーションを通じて、アート作品を鑑賞していきます。他者がいることで、ひとりではなかなか到達できなかった作品への解釈、新しい発見がそこに生まれていくでしょう? ACOPはそれを実感するためのプログラムなんです。
—福教授は大学の授業のなかで、ACOPを取り入れていらっしゃいますよね。実際どんな流れでACOPを進めていくのですか?
最初はその作品にまつわる知識や情報に頼らずに、とにかく隅々までじっくりと1つの作品を鑑賞する。そのなかで何かを感じたら、なぜそう感じたのかを考える。そうして湧き上がった自分の想いや疑問などをグループで話し合っていく、という流れです。
—作品を通して自分が感じたことは、すごく感覚的なことだったりもするじゃないですか。それを他者に伝わるように伝えるというのは、結構難しい作業ですね。
それをまたグループで行っていくので、話が作品から離れて脱線したりします。そのための調整役として“ナビゲイター”を必ず1人、グループのなかに置きます。ACOPにおいて、このナビゲイターという存在はとても重要です。作品と鑑賞者の間をより密接に繋ぐ役割を担っているわけですから。授業の前期は鑑賞者として経験を積んだ学生たちに、後期はこのナビゲイターになるトレーニングを行ないます。