美術館で音声ガイドを聴いたりすることも多いのですが、今回の展示では、作品前に設置されたタッチパネル上で作品の画像を拡大し、細部まで観察できるようになっていたりして驚きました。ひとつの作品に対して、いろんな見かたが用意されているというか……。作品を、すごく吟味して観ることができたと思います。
展示作品の中でいちばん気になったのは、≪ディオニュソスの仮面≫。粘土製であまり厚くないのに、2000年以上前に作られたものがあんなにきれいに残っているのが不思議で。ミュージアムラボのスタッフに、発掘当時はバラバラになっていて、それを復元したものだということを聞いてさらに感動しました。修復の技術ってすごいんですね。
古典美術は、昔の考えかたや現代とのつながりを学べるところが好きです。たとえば今回の展示作品では、クラテル(写真上)が使われていた宴会は当時「シュンポジオン」と呼ばれていて、それが現代の「シンポジウム」の語源になっていたり、オリンピックで受賞者に与えられる月桂樹の冠がクラテルに描かれていたりと、古代ギリシアの文化がさまざまなかたちで現代に残っていることを知りました。そういったことがまだまだたくさんあると思うと、世の中っておもしろいですよね。
そういえば以前、神話を題材にした野田秀樹さんの舞台『ザ・キャラクター』に出演させていただいたときに、神話について調べたことがあります。でも、あまりにも深くて……それに、伝承された時代や地域によってストーリーが違ったりするんです。「究める」ところまでは到達できなかったのですが、今回の鑑賞を通してまた興味が出てきました。