後期作品紹介
《ヴェルザーの地球儀》
新全世界地図
クリストフ・シュニープ
1550年以降
アウクスブルク、ドイツ
直径22cm
幅27cm、高さ36cm
銅・手彫り
16世紀半ばには、ドイツ人の神聖ローマ帝国がヨーロッパの貿易・経済に圧倒的な影響力をもっており、特にフッガー家やヴェルザー家といった商人や銀行家が勢力を誇りました。この地球儀は、インド方面への航海やベネズエラの植民地化計画に力を貸していたヴェルザー家のために製作されたものです。
銅板に手で彫られたこの地球儀は一点製作の作品で、地図の描き方は同時代の世界地図や地球儀を参考にしています。このような一級品の地球儀を所有するということは、ヴェルザー家にとって、富や権力、そして自らの商行為の対象として野心を寄せている地理上の範囲を誇示することでした。子午環と地平環、脚部が作品の装飾性を際立たせています。大理石の基盤は、おそらく後世に付け加えられたものでしょう。
《木製地球儀》
木製地球儀
製作者不詳
1535年頃
ドイツ
直径21cm
高さ43cm
木・手描き
19世紀末にイタリアで発見されたこの地球儀には、製作年や製作地の記載もなく、また署名もほどこされていません。地理学上の特徴や地名の選択からすると、16世紀前半のドイツの地図製作の系譜に近く、特に地図・地球儀製作者ヨハン・シェーナーの影響を受けていると思われます。ヨーロッパ人が到達した新世界に関する事項が見られること、またそのアメリカ大陸とアジア大陸がつながって一つの大きな大陸として表されていることから、1535年頃の成立と推定されています。
地球儀本体は、木製の球を石膏の層でおおってつくられていますが、その石膏がところどころ崩れています。鉄製の軸を中心に回転するようになっており、軸を支える一本の支柱は赤く塗られ、金箔の跡も見られます。木製のこのタイプのものは、当時、地理学や天文学の教材用に使われていたと考えられています。
《ヴォーゴンディの天球儀》
天球儀
ディディエ・ロベール・ド・ヴォーゴンディ
1764年
パリ、フランス
直径23cm
幅33cm、高さ52cm
紙・印刷
有名な地図製作者の息子であったディディエ・ロベール・ド・ヴォーゴンディ(1723−1786年)は、地球儀・天球儀の製作と販売を専門としました。フランス王ルイ15世の注文を受けた彼は、1751年、王立海軍の船に装備するための一対の地球儀・天球儀を考案しました。
直径45.5cmの豪華な作品でしたが、後に増補改訂が行なわれ、1764年に新版がつくられました。この新版に続いて、上流市民層の顧客からの高まる需要を満たすため、より小さなサイズのものも発表されました。ここに展示された天球儀は、直径23cmの縮小版で、記述が詳しく、新しく発見された内容も盛り込まれています。フランスの啓蒙主義の時代に生み出された代表的な作品です。
《ラロシェットとボンヌフォンの地球儀》
地球儀
シャルル・ラロシェット、ルイ・ボンヌフォン
1867年
パリ、フランス
直径39 cm
幅52cm、高さ92 cm
紙・印刷
地球儀
シャルル・ラロシェット、ルイ・ボンヌフォン
1873年以降
パリ、フランス
直径28cm
高さ49cm
紙・印刷
C.ラロシェットとL.ボンヌフォンの地球儀の舟形図
シャルル・ラロシェット、ルイ・ボンヌフォン
1869年
パリ、フランス
縦50cm、横65cm
紙・印刷
1867年、シャルル・ラロシェットとルイ・ボンヌフォンは、直径50cmの大型の地球儀を教材用に製作しました。彼らの地球儀は、フランス地理学の成果品の優れた質を体現する作品として選ばれ、パリ万国博覧会でメダルを授与されました。縮小版がつくられるようになり、多くの場合は教材として、フランス国内に普及しました。この直径39㎝の縮小版は床置き式のもので、「カヌレ」と呼ばれる縦溝彫りのほどこされた脚部をもつ、かなり贅沢な作品です。ここでは、直径28㎝の普及版の地球儀と、地球儀をつくる際に使われる舟形図が併せて展示されています。
※いずれもパリ、フランス国立図書館蔵
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