青い服を着て、犬のひもを持つ男の子――スペイン絵画の巨匠、ゴヤが1791年に描いた《青い服の子供》がルーヴル美術館で公開されるようになったのは2009年のこと。それまではほとんど見ることのできない“幻の作品”でした。 モデルはルイス=マリア・デ・シストゥエ。スペイン国王夫妻を名付け親に持ち、後にスペイン独立戦争の英雄となった人物です。この肖像画は彼が2歳8カ月のころに描かれたもの。素朴で簡潔な画面構成の中、衣服の青、帯のばら色などの色調や背景のかすかな光がみずみずしい印象を残します。 この絵はシストゥエ家に代々、大切に受け継がれてきましたが、1928年、アメリカの実業家、ジョン・D・ロックフェラーJr. の手に渡りました。1980年代初頭にはファッションデザイナーのイヴ・サン=ローランとピエール・ベルジェの所有となり、イヴ・サン=ローランの死後まもなく、2009年にルーヴル美術館に寄贈されたのです。 「ゴヤの《青い服の子供》ルーヴル美術館のスペイン絵画コレクションに入るまで」は、この作品が美術館のコレクションに加わってから館外で公開される初めての機会です。会場では、作品に描かれたモデルや、かつてこの絵を所有した人々により親しみを感じられるような展示がされています。美術館の研究室を再現したコーナーでは研究者の視点で絵画を科学的に分析し、ゴヤのいくつもの試行錯誤や筆のあとをたどることができます。そして現在、ルーヴル美術館で《青い服の子供》が公開されているスペイン絵画展示室をイメージした空間では、グレコをはじめ、ムリーリョ、ゴヤといったスペイン絵画の巨匠たちについて学びながら、美術館のコレクションが時間をかけて形成されていく様子がわかります。会場の最後にはゴヤとその作品を自分なりに解釈する体験も用意されています。こうして、多彩なアプローチから作品と出会うことができるのです。 画家の手を離れてから、多くの人々の目に触れ、愛されてきた《青い服の子供》。この一枚の絵をさまざまな視点から鑑賞することで、絵とあなただけの特別な関係を築いてください。 |
|||